OBSの音声フィルタ「VST 2x プラグイン」を使ってマイクにエコーを掛ける方法
はじめに
OBS Studioは音声にフィルタを掛ける機能があります。
その機能の中の一つ「VST 2x プラグイン」機能を使えば、音を自在に加工することが可能になり、配信の質向上が期待できます。
マイクの種類や機種は問いません。どんなマイクでも加工OK。
少々PC知識と音響知識が必要になってきますが、「VSTプラグインの導入方法」と「使用方法」をPCや音響にもあまり詳しくない方にも分かり易くご紹介していきます。
※本記事ではエコーをリバーブと名称を統一し説明します。
[追記 2018.9.26]
Twitterでこの記事のURLを見かけ、久々にPVを確認したらかなり増えてて驚きました…。YouTubeでの需要が特に増えてきたからでしょうか?
何にせよ、皆さんが読みやすいよう説明を見直しました。よく分からなかったらお気軽にコメントしてくださいね!
[2019.1.3 一部修正]
[2021.4.7 一部修正]
この記事の目次
- はじめに
- VSTプラグインとは
- 何故OBSはどの音にも加工可能なの?
- VSTプラグインの導入方法
- OBSでマイクにVSTプラグインを掛ける
- VSTのデメリット
- 終わりに
- おまけ / VSTを複数重ね合わせてボイスを加工する
VSTプラグインとは
そもそもVSTプラグイン(以下VST)とは何ぞや?って話です。
簡潔に紹介すると、
- 音楽編集ソフト(DAW)内でボーカルや楽器にエフェクトを掛ける機能
です。VSTには様々な種類があり、リバーブなど音を加工するシンプルなVSTから、ボーカロイドを調律するVSTまで存在します。楽曲制作ではこれらVSTを組み合わせてより良い音楽を作り出します。
つまり、楽曲制作に使うガチエフェクトをOBS内でも使えるようにしたぜ!ってのが今回ご紹介する機能です。恐るべし!
何故OBSはどの音にも加工可能なの?
読み飛ばしても問題はないので、仕組みを理解したい方は是非読んでみてください。
まずはOBS以外で加工する方法が以下の図。(わかりづらい図ですみません)
例えば図の上段ではIFの内部で加工を終えていて、下段ではPCに入力される時点では既に加工を終えています。
つまり、OBSへ到達するまでに加工処理が終わっています。
対してOBSの場合は、
先述した通りOBS内で直接加工処理を行われます。そのため音声さえOBSにちゃんと届ければどんな音源であっても加工が可能となります。
※音声デバイス
「PCに入力されたマイク音」(USBマイクやIF)や「PC上の音」などといった各方面から入力される音を処理するシステムを指します。
VSTプラグインの導入方法
1. VSTプラグインのダウンロード
まず初めに、使いたいエフェクトの機能を持ったVSTを準備する必要があります。
VSTはプロ仕様の有料版から、フリー版まで幅広くたくさんの種類が存在するため、用途に合ったものを選びましょう。
「リバーブ フリー VST」あたりで検索掛けるとフリーもいっぱい見つかります。
今回はリバーブ機能を持ったフリーVSTをダウンロードします。
「SanfordReverb」を今回は導入します。
http://www.lesliesanford.com/vst/plugins/
ダウンロードしたZipを展開します。
.dllファイルがVSTです。「SanfordReverb.dll」(64bit)「SanfordReverb32.dll」(32bit)の2種類が用意されています。
.dll表記がない場合は「ファイル名拡張子」にチェックを入れます
2種類のうち、使うVSTはひとつだけです。どちらを使うかはOBSのbit数を確認して決めます。
OBSを起動します。
OBSの上部、画像の赤線部に動作bitの表記があります。
今回の場合は「64bit」なので、VSTは無表記であった「SanfordReverb.dll」側を使用します。
確認が終わったら一旦OBSは閉じます。
2.指定フォルダへVSTプラグイン(.dll)を移動
VSTをどこへ置けばOBSで使えるようになるのか、いまいち記載がない…!
以下の場所に.dllをコピーすることでOBSがVSTを読み込んでくれます。
- OS(Cドライブ) > Program Files > VstPlugins
ここで注意ですが、「Program Files」にも64bit用と32bit用があります。「Program Files(x86)」が32bitです。
今回OBSは64bitだったので「Program Files」を開き、開いた先にある「VstPlugins」フォルダに.dllを置くことで導入が完了です。
ということで「Program Files>VstPlugins」に「SanfordReverb.dll」を配置しました。
※「VstPlugins」フォルダが「Program Files」の中に無かったら、スペルミスしないように「VstPlugins」という名前のフォルダを新規作成してください。
OBSでマイクにVSTプラグインを掛ける
OBSを起動します。起動したままでしたら一度OBSを開きなおします。
これからエフェクトをマイクにかけていくのですが、加工後のマイク音が聴こえなければいけないので聴こえるようにします。
画像のように
- ミキサー枠「マイクデバイス」 > 歯車マーク > オーディオの詳細プロパティ
から、
マイク(私の場合はマイク=QUAD1-2)の音声モニタリングを「モニターのみ(出力はミュート)」にします。
「モニターのみ(出力はミュート)」は自分の声がイヤホンにモニター(再生)され、且つ配信には乗らないモードですので、テストが終わったら必ず「モニターオフ」に戻しましょう。
なお、基本的に配信中は加工後の音を聴くことはできません。配信前に必ずエフェクトのチェックを「モニターのみ(出力はミュート)」で確認しましょう。
VSTを掛けていきます。
画像のように
- ミキサー枠>マイク名のところにある歯車マーク > フィルタ
でフィルタを起動します。
何も設定していなければ、画面左の音声フィルタ枠は空状態です。
を行うと、枠内に「VST 2x プラグイン」が追加されます。
「VST 2x プラグイン」を選択すると、画面右にVSTを選択するバーが表示されますので、「SanfordReverb.dll」を選択します。
この時点で「SanfordReverb.dll」が項目に表示されない場合は導入の手順に誤りがないか見返してください。
「プラグインインターフェースを開く」を選択します。
この状態で既にリバーブが掛かるはずです。リバーブの長さや強度など、エフェクトの設定はVSTの設定画面で行います。
中央下の「REVERB」枠が長さや合成具合を調整するパラメータですので適当にいじってみてください。
VSTのON/OFFは
目玉マークでオン・オフを切り替えます。
VSTのデメリット
魅力満載なVST機能ですが、欠点もあります。
- CPU処理を要する
本格的に音楽制作する目的で作られているVSTも多いため、VSTによってはある程度のCPU処理を要求します。
配信内容によってはCPU使用率100%も考えられるため注意が必要です。OBSクラッシュや音声の破綻につながります。
- VSTによっては処理にタイムラグが発生する
ここが結構ネックですね。
VSTはリアルタイム加工を行うのですが、処理内容が複雑なエフェクトとなると100~200msほど結果を出力するのに遅延が発生します。
これで困るのが歌配信です。
「本人はズレなく歌ってるつもりでも配信者にはボーカルが遅れて聴こえる」といった現象が起きます。
これはカラオケ音源は遅延なく配信されているのに対し、マイクはOBS内のVST処理によって遅延が発生したものが配信されていることによるタイミングのズレです。
この現象はPCスペックに依存するものではなくVSTの仕組み上どうしても遅延を要するといった場合が多いです。配信で使用することを想定していないVSTも多いので「無理させて悪かった」と潔く諦めましょう。
- VST2にしか対応していない
VST3~には対応していません。
配布VSTによってはVST2なのか3なのか無表記なものも多いので、一旦「VstPlugins」フォルダに配置してOBS上で選択できるか試すのが良いと思います。
中には表示されたけど選択するとOBSが確定クラッシュするパターンもあります。時間や環境に余裕がある時に設定をお勧めします。
- 64bitOBSに32bitVSTは使用できない
ここが結構難点ですね。ほとんどの方が64bitOBSだと思いますが、残念ながら32bitVSTは64bitOBSで読み込むことはできません。
これはOBSに限った話ではなく、DAW業界に共通して言えます。
「評価の高いVSTなのに~~!」となっても諦めましょう…。
終わりに
OBSって本当多機能ですよね。便利さにいつも驚かされます。
ただし先述した通りVSTは音楽を吟味しながら作る機能であり、配信に特化されたものではありません。上手く僕ら側から使ってあげる必要があります。
是非うまく分かち合ってよい配信を~。
おまけ / VSTを複数重ね合わせてボイスを加工する
先述した通り
- VSTは音楽制作ソフトで使用するエフェクト
です。つまり、VSTを組み合わせて使えばガチなボーカルエフェクトを作成することもできます。ここが凄いです。
これを実践することで歌ってみた配信はもちろん、ゲーム配信も聞きやすくなります。
ここでは、「音楽知識とか全然ない!」とか「VSTを今日初めて聞いた」って方向けにも分かるよう、とりあえずこれがあればいいんじゃない!ってVSTと設定値をご紹介します。 導入方法は上で説明したとおりです。
最初にお断りしておきますが、私自身、そこまでミックスや加工に詳しい人間ではないので「こんな使い方と効果か~」程度の軽い感覚で見て頂ければ幸いです。
1.イコライザー(EQ)
≪効果≫
ある特定の音域(高い音や低い音)だけを強調させたり、低減させたりできます。
これによって、人の声に効果的な音域を強調させたり、ノイズが乗りやすい音域を削って、結果的に聴きやすくさせることができます。
実況配信・歌配信両方に効果的です。
【ColourEQ】
上記リンクより、Zipをダウンロード。展開すると、32、64bit版があります。
導入するとこんな感じです。
最初はフラット状態です。
少し加工してみました。
簡単に説明します。
まず
- dB = 強調度合い。 マイナスが低減。
- Hz = 音域。数字が低いほど低音域。
です。まず低音ですが、100Hz以下は特に声には必要なく、ノイズ要素を多く含むため不必要です。一番左のLowcutを41→100Hz辺りにし、一番下のBypassをクリックし、一気に低減させます。
次に、篭りの一因「500Hz」あたりを少しだけ低減。そして、声の明るさである6500Hz付近を強調させた図です。
篭りがなく、聴きやすさに重視しています。
お遊びとして、雑なグラフで申し訳ないですがこのようにしますと、
AMラジオっぽい音になります。中音域である2500Hz辺りをがっつり強調し、他の要素はバッサリ斬り落とします。
このようにEQは、音そのものをコントロールできます。
下記事はボーカルのEQを解説した記事です。
超初心者のためのミキシング講座 / イコライザー編⑫【ボーカルのEQポイント(男性)】│ChanomaのSound Laboratory
2.コンプレッサー
≪効果≫
音量差を安定化させ、大きな音量を一定量まで瞬時に下げて、全体的な音量を均等化する役目があります。
例として、「突発的に起きる突飛した音量(拍手や叫び声)」や「Aメロとサビの声量差」といった音量差を均一化し、常に同じ音量に聴こえるよう加工してくれます。
OBSに標準で搭載されているので、そちらを使っても構いませんが、加工具合を視覚化できるVSTをご紹介します。
TDR Feedback Compressor Ⅱ
http://www.tokyodawn.net/tdr-feedback-compressor-2/
こちらもZip内に両bit版が存在します。
起動時はこんな感じです。強そうですね。
まずは、配信用途に合わせて、マイクを普段の音量まで上げてください。
最初に共通したパラメータRATIOの説明です。
RATIOはコンプが働いたとき、音量をどれだけ軽減させるかを表します。
数値が大きいほど、コンプが働いたときに「ギュッ」と軽減されます。気にしなければ、4~5で良いです。
≪実況の場合≫
普段の実況でコンプレッサーが掛かる必要はありません。うるさいと感じる時だけ効果が得られるように、例えば大きな声を出したとき、コンプが動くようにしましょう。
まず、スレッショルド(THRESHOLD)を-25dBあたりにして大きな声を出してみて下さい。
右の青いバーが動きましたか?
動いたら軽減中のマークです。動かなかったら、スレッショルドのdBを下げてください。
この青いバーが6まで行き過ぎると掛かりすぎになります。(=dBの設定値が小さすぎるので、数値を大きくします)
- 大きな声を出したときだけ、青いバーが動けばOKです。普段の声はそのまま、大きな声は音量が軽減されています。
≪ボーカルの場合≫
Aメロで少し、サビでしっかりと掛かればよいかと思います。
とりあえず歌ってみて下さい。
Aメロの落ち着いた声量で
サビの大きく声を出す声量で、
なスレッショルドになればよいかと思います。
また、声量に差がある方=青いバーの振れ幅が大きくなる なので、どうしてもいい具合にならないって方は振り切ったりしてもいいと思います。生放送なので。
下つまみのATTACK RELLESEですが、これは
- 加工する範囲の大きい音を感知してからコンプを実際に掛けるまで~必要になくなったと判断された時のコンプを無効にする時間の長さ
です。ボーカルにおけるコンプレッサーは奥が深いので、詳しいことは検索してください。
これぐらいかなぁと。
実況ならば、EQとコンプを。歌配信なら、そこに追加で常時リバーブを掛けていけば、更に質の良い配信が実現できるかと思います。
VSTはこれ以外にも数多くありますし、加工のパラメータ値はマイクの性質、音質によってもごっそり変わってくることもあります。
ここまでくるともう音楽の世界です。私も偉く語れる域では無くなります。
ここで紹介した値はほんの触りでしかないので、もっとしっかりしたい!という方は、専門サイトで知識を深めるなり、OBSの録画で加工した音をじっくり聴いて最適な値を探すなどして、更に良い配信ライフを楽しんでください!
以上です。